株式会社クオリティ・アンド・バリュー

今日もココロをストレッチ

2022年8月〜から1年間、秋田魁新報等の新聞で連載されていたコラム「今日もココロをストレッチ」を一部加筆修正して掲載します。

第14話

ストレスと上手く付き合う方法~その1.ストレスと現代人の脳

現代はストレス社会と言われています。仕事や人間関係に関わる小さなストレスから、戦争や気候変動などの大きなストレスまで、
私たちはストレスに囲まれて暮らしているといってもいいでしょう。
先行き不透明なこんな状況での生活は、知らない間に精神的なストレスが溜まっているものです。
どうやら私たちはストレスと共に上手に生きる手立てを考えなくてはならないのかもしれません。

そもそもストレスって何なのでしょう。人類とストレスの歴史を紐解いてみると、なんと狩猟時代まで遡ります。
人類は移動しながら狩りをして食べ物を調達して暮らしていた時代です。その頃の人間の最大のストレス原因は、猛獣の存在でした。
食べ物を得るには狩りをしなければならず、それは常に危険と隣り合わせ。
「fight or flight」(闘うか逃げるか)、一瞬の選択を迫られるなか、常に「コイツを殺らなければオレが殺られる」状況はまさに極限状態。
命を懸けた瞬間の対処を強いられることがストレス原因だったのです。

ところで、人間の脳というのは当時からあまり変わっていないと言われています。つまり「生きるか死ぬか」をかけた刹那的な判断を要するストレス対処に適した脳は、
現代的なストレスをうまく処理できない。
ストレス原因があまりに違うからです。
先の見えない不安さや仕事や人間関係の悩みといった情緒的で複雑な問題解決に私たちの脳はあまり有能に働いてはくれないらしいのです。
だからこそ、新しいストレス対策が求められるわけです。
それが「コーピング」です。「コーピング」とはまさに「対処」という意味合い。新しい現代的なストレスの波をうまく乗りこなすためのさまざまな方法が考えられ、
すでに実践されているのです。

第13話

自分が知っている自分と他人の目に映る自分~自分を知ってるのは自分?

「あなたはどんな人ですか」と聞かれた時、何と答えますか。
私ってこういうタイプ、としっかりした自己認識を持っている人も多いのですが、人の個性は実に多様なものです。
楽観的、慎重、社交的、勤勉、ユーモア、負けず嫌い、従順…、ひとことでこうだ、と決めてかかれないのが人というものです。

私は、医療系の学校でコミュニケーションの授業をしていますが、毎年、スタート時に「ジョハリの窓」をテーマにした授業を行います。
「ジョハリの窓」とは対人コミュニケーションの本質をわかりやすく説いた心理学モデルです。自分が知っている自分と、人から見た自分のギャップを知り、新しい自分像と多様性を体験的に知ってもらうことを目的としたコミュニケーションワークをしています。

例えば自分を「話が下手で暗い」と言っていた学生さん、自信なさげに話す声も小さく視線も下を向きがちでした。ワークでは自分が自分をどう見ているか、人が自分をどう見ているかをグループで話し合います。「個性的で面白いよね」「おしつけがましくなくていい」と想定外の賞賛を友だちから聞くことができました。この体験は本人にとって大きなプラスの転換です。小さなきっかけによって人は変わることができます。少し明るくなれた気がします、と後で話してくれました。

他者から見た自分像というのは時に、自分の認識とは全く異なります。
自分をこんな人間だと決めつけ、勝手に自分に×(バツ)をつける前に、ほんのちょっと勇気を出して「どう見える?」と身近な人に聞いてみて下さい。
まだまだ知らない自分像が眠っています。それはそのまま自分の可能性でもあるのです。

第12話

自分とのコミュニケーション、とってますか?~落ち込みやすさについて

落ち込みやすい人って確かにいます。ちょっとした失敗や、人から言われたことをいつまでも忘れられなかったり、引きずってしまう、グルグル・クヨクヨのネガティブな思いグセがある人です。でもそれを「仕方ない、性格だから」と諦めてしまうのはもったいない。

落ち込みやすい人は「自分とのコミュニケーション」をきちんととることでネガティブな思いグセをやめることができます。
自分とのコミュニケーション? 聞いたことないよ、と思われるでしょうが、一般的な「他者とのコミュニケーション」とは区別した、もうひとつのコミュニケーションがあるのです。

自分とのコミュニケーションは、自分のことを知る自己認知から始まります。
例えば、自分が心地よいと感じられる人との付き合い方や環境はどんなものですか。
やる気になるのはどんな時ですか。
反対に気詰まりに感じるのはどんな時?
働くのは辛いと感じるのはどんな職場でしょう。

人は案外自分のことを知らないものです。特に他者に見せている自分と内面的な自分が違うということに自分自身が一番気付いていなかったりします。 自分の内面を理解することで、実はストレスを感じている今の人間関係や職場への関わり方を変える、という防衛策が打てるようになります。

人は誰しも流されやすいものです。世間体や一般論で「良い」とされる鋳型に自分自身を無理やり合わせてばかりだと時に苦しくなることがあります。そんなときは、心から「好き」「気持ち良い」と感じるものにもっと素直になっても良いのです。「自分とのコミュニケーション」はあなたが自分の一番の理解者・庇護(ひご)者となって自分を大切にすることから始まるのです。

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