株式会社クオリティ・アンド・バリュー

今日もココロをストレッチ

2022年8月〜から1年間、秋田魁新報等の新聞で連載されていたコラム「今日もココロをストレッチ」を一部加筆修正して掲載します。

第5話

疲れたら目線を上げる!ちょっとしたリフレッシュ方法

「ちょっと疲れたな」という時、私たちはお茶を飲んでホッとしたり、身体をストレッチしたりして気分を変えようとしますね。それはそれでいいのですが、もっと手軽に、一瞬にして気分が変わる方法があります。
それは「目線を上げること」です。
疲れた時、落ち込んでいる時、人はたいてい下を向いて背中も丸まり、小さく固まっていることが多い。自分のそんな状態に気付いたら、すっと頭を起こし目線を上に上げてみてください。するとあら不思議、視野が拡がって周りが明るく見える。気分もシャキっと変わります。
目線を上げると姿勢も良くなり、深く息を吸い込めるようになります。
深呼吸も自然にできて一石二鳥です。深呼吸が心の安定に効果的であることはご存知の方も多いですね。

 目という器官は脳の一部が外に露出した部分である、とある学説では言われていて、目の動きは脳と連動する部分があるようです。私たちの五感とも密接に関わっており、目の動きが心の動きと関連性があると考えられています。
例えば、目線を上にすると頭の中で視覚的なイメージや映像が浮かびやすくなります。昨日食べたランチを思い出してみてください。その映像が頭に浮かんでいる時、あなたの目線は上にいっているはずです。
目線を目と並行にすると音や言葉に集中しやすくなります。これは聴覚を使う時の目線です。大好きなあの曲を頭の中でリピートしようとすると目線は平行です。
下に向けた目線は自分自身の体の感覚に注意がいきます。なにか美味しいものを味わうとき、目を閉じて食べ物の味や香り、食感に感覚を研ぎ澄ませ味覚を感じようとします。同様に触覚や臭覚といった身体の感覚を自分の中に探るときには目を閉じたり、下を向いたりすることが多いようです。

さて、目線を上げると気分が回復する、という現象もこの学説の一部です。
集中してパソコン仕事をしたとき、オンライン会議が終わってホッとしたとき、あるいは、さっきのイヤ~な出来事を思い出してしまったとき。
いつでもどこでも、目線をちょこっと上げてみてください。簡単にできる気分転換、元気チャージの方法です。

第4話

傷つきから飛躍する〜金継ぎのココロ

世界的に「金継ぎ」がブームとなっていることをご存じでしょうか。「金継ぎ」とは室町時代に起源を持つ、日本の伝統的な器の修復技法のことです。割れや欠けのある茶わんを漆で継ぎ、その上から金粉を蒔(ま)く。すると、欠損部分の補強とともに、金粉は美しい装飾となります。壊れ物が唯一無二の器に昇華する、そこが面白いのでしょう。また、物を直して長く使うという考え方もサスティナブル社会にマッチしています。「KINTSUGI」はそのまま海外で通じるくらいにポピュラーになっているのです。

「金継ぎ」の世界をもう少し掘り下げると、壊れた器は人の心の象徴とも言えるでしょう。傷ついた心を癒やすように自分で器を直す、しかも金で美しく飾る行為は自分自身とその人生を礼賛することにもつながります。

人の心は傷つきやすいものです。けれども、傷つく経験によって前よりもさらに大きく飛躍できる可能性も秘めています。心的外傷後成長(PTG)と呼ばれる状態がそれです。
大病を患った経験のある人がそれまでの生き方をガラリと変えて、まったく違う人生を新たに歩き出す、という話は珍しいものではありません。大病だけではなく思いもよらないショッキングな出来事は人生の側面のひとつ。大きく傷つく経験は、人が人生を変えるきっかけやエネルギーとなり得ます。
そうした変容を遂げた人たちには共通する特徴があり、「明るく前向き、周囲への感謝にあふれ、人生の目的を見いだしている」ということです。

人の心は繊細でもろいもの、けれども同時に強く逞(たくま)しく美しいものです。そしてどんな人でも傷ついた経験を持っているものです。傷や欠けも魅力にしてより輝きを増す、人にはそうした力もあるのだと「金継ぎ」は気付かせてくれます。

第3話

人生100年時代のココロの在り方

人生100年時代と言われます。心身ともに健康で充実した人生をなるべく長く送りたい、と誰もが思っています。実際、元気に働き、積極的に社会参加している高齢者は増えているようです。先日、ある会社の相談役として活躍しておられる80代の方とお会いしました。その方とお話をしていた時に印象的な言葉がありました。
それは、「今が一番幸せなんですよ」というひとことでした。

100歳を超えて元気に暮らす長寿者のことを1世紀以上を生き抜いたという意味で「センテナリアン」(Centenarian)と呼びます。その健康長寿の秘訣については各分野で研究が進んでいます。注目すべきはセンテナリアンの血液状態です。私たちの血液は加齢によって少しずつ慢性炎症という症状が進みます。これが老化や病気の原因になるのですが、センテナリアンにはこの症状が極めて少ないのだそうです。そして慢性炎症を抑える要因として考えられるのは、共通した食習慣や運動習慣ではなく、どうやら心の状態にある、ということがわかってきたのです。それが「今が一番幸せ」です。センテナリアンたちはたとえ病気であっても異口同音に、いまが一番幸せだと語ります。

「足るを知る」という言葉があります。本当に幸せな人とはどんな状態の中にあっても幸せを見つけることが出来る人なのでしょう。これだけ医学が進歩しても健康長寿の秘訣は食べ物でも運動習慣でもなく、「心の在り方」なのだということはとても興味深いことです。ということは私たちにも可能性があります。
人生100年時代、元気で幸せなセンテナリアンへの道は誰にでも開かれているのです。

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