株式会社クオリティ・アンド・バリュー

今日もココロをストレッチ

2022年8月〜から1年間、秋田魁新報等の新聞で連載されていたコラム「今日もココロをストレッチ」を一部加筆修正して掲載します。

第11話

片付けられないは心のあらわれ~過去への執着・未来への不安

仕事場の窓から庭の緑がよく見えます。
この緑を見ながら仕事をしたい、とふと思いました。机の向きを壁から窓へとクルリと変えると、ささやかな自然の移り変わりが目の前に広がって気分が上がる。仕事もサクサク進みそうです。となると、まずやらねばならないのはモノの整理。古い資料類をシュレッダーにかけたり、もう読まないであろう本をリサイクルに出したり、モノを片付けることからです。

この片付け作業というもの、いつの頃からか手順化され精神論にまで話が及ぶようになり、その道のプロフェッショナルまでいる立派なビジネスになりました。
かつてわたしもプロに片づけをお願いしたことがあります。クローゼットに詰め込んだ服の整理をしたのですが、それが面白い経験でした。
まずはすべての服を出す。これは見える化と全体把握です。そして残す服を選択するのですがその基準は「いまここ」の精神です。「昔のお気に入り」「いつか着られるんじゃないか」といった迷いの気持ちを断ち切り、「今着たい」服のみを残すことに集中する。これは現在の自分の価値観に向き合うこと。
この時、プロから学んだことがあります。モノを整理できないのは「過去への執着、未来への不安」なのだそう。今のご自分を大切にしてください、と言われました。片付け術にも深い精神性があり、なによりモノを選ぶ、ということは今の自分そのものを知ることでした。

さて、私の仕事場のレイアウト変更プロジェクトは現在進行中です。数か月後には窓向きの明るい机でこのコラムを書いているはず、と未来の自分に期待しましょう。

第10話

終わりは始まり~「未完了」を「完了」して前に進もう

子供の頃に読んだ童話はたいていハッピーエンドです。お姫様と王子様が出会い幾多の障害を乗り越えて結ばれる。めでたし、めでたし…。

けれども現実はそれほど甘くない。実らない恋や片思いの恋で終わる方が多いかもしれません。
告げられなかった言葉や遂げられなかった思いは心の中に残り続けます。
切ないですね…

さて、思いが残るのは恋愛だけではありません。
途中で辞めた部活や習い事、打ち切りになった仕事など、エンディングを迎えられなかった出来事への思いは「未完了」として心の中で不完全燃焼し続け、マイナスの影響を与えます。

ある男性の話です。途中棄権してゴールできなかったフルマラソン大会の悔しさが10年以上残っていました。それ以来、「途中で諦めた自分」が許せず自分自身への信頼が揺らぎ、なにかにつけてそれを思い出して次に進めない感覚があったそうです。
そこで彼はもう一度、とにかくやり切ることを目標に10キロマラソンにチャレンジしました。
ここで大事なのはフルマラソンにこだわることではなく、今できる範囲で自分が納得する「完了」の方法を見つけることです。10キロを見事走り切り、その男性は「目標を達成した感覚」で満たされました。
これまでの不完全燃焼はふっきれた、と笑顔で話してくれたことを思い出します。

止むを得ず途中で終わってしまった「未完了」のできごとは誰にでもあり、残念ながら過去を取り戻すことは出来ません。
けれども、思いが残っていたり、引きずっているのならば自分なりの「完了」の方法ですっきりさせて次に進みましょう。
大事なのは自分の納得感です。

折しも季節は春。
日本では学生も社会人も「終わり」を迎える時期です。
自分の物語は自分なりの方法でハッピーエンドにすることができる、と知っていてください。

第9話

「書く」ことでスッキリ、アタマとココロを整理する「ジャーナリング」

思うに、大人の毎日は問題解決の連続です。
仕事の案件も家族のごはんづくりも、向き合ってこたえを出していくこと。
考えたり、悩んだすることは日々のルーティンとも言えますね。
さてそんなとき、どうやって問題を解決していますか。

「人に相談する」
それももちろんいいですよね。
話すことで気持ちが楽になるし、
聴いてもらえることって安心です。
人からもらうアドバイスは自分では考えなかったような視点に
気付かされることも多いです。

でも、そもそも悩んでいることを人には言わない、言えない
なんていう人もいます。
自分で解決したい、迷惑かけたくない、きっかけがない、
そこには大人ならではのいろいろな理由と想いがある、
それもわかる。

けれども、
ひとりで考え込んだり、抱え込む前に
自分で何とかできる方法があったとしたら
やってみる価値はありますよね。

1人で出来る解決方法。
それは「書く」ことです。
頭の中でグルグル考えていること、
悩んで答えを出したいこと、
モヤモヤした重たい気分も含めて、
とにかく紙に全部吐き出すつもりで
とにかく一気に書きだすと答えが見えてくることが多いです。

字を間違えても、
文章が繋がらなくても
ぜんぜん気にしなくていいです。
頭の中をカラッポにするつもりで思いつくままにペンを走らせる。

不思議なことに書き出すと
誰かに話したみたいに気分がスッキリする。
そして、さらには悩んでいたことが客観的に見えてきて
自分でどうにかなったりもします。

「書くこと」
それは頭の中を「見える化」する方法です。
ビジネスの世界では問題解決手法のひとつとして
昔から活用されていました。
例えば古くは話し合いのときにホワイトボードに板書する、
または話のプロセスを絵にするグラフィックレコーディングなど、
さまざまな「見える化」の方法が考えられてきました。
どれもみんなの考えていることを文字や絵にして「見える化」したものです。

心理学の分野で活用されている「見える化」は
考えていることや悩みを「書き出す」。
これは「ジャーナリング」と名付けられています。
エビデンスのある対処方法としてセラピーにも活用されています。

ビジネス分野でも心理学でも同様ですが、
書き出すことでものごとを客観的に捉えられる効果があります。
「ジャーナリング」では集中して書き出す行為自体が瞑想状態へと導いてくれて
脳をすっきりさせる効果もあるようです。

最近は若い方から「携帯に打ち込んてもいい?」
という質問を受けることも多いのですが
個人的には、
アナログにペンと紙の方がいいような気がします。
頭の中から出てくる言葉を携帯では追いきれないし、
(若い方は違うかも?)
書いたことと自分との距離間を感じます。

ためしに、ペンと紙で書いてみてください。
時間を決めて最初は10分くらいとしましょうか。

集中して書き出すことで問題解決、やってみてください。

Page Top